万歳からのぞきからくりまで 狂言師が実演する放浪芸

新潟県巻郷土資料館

2006/9/9 訪問

編集中
行って参りました、新潟。

ここは、日本に現存する数少ない「のぞきからくり」を所有する県です。
巻という所の郷土資料館にからくりが収蔵されています。
その土地の様子なども含めて記録を残しておきたいと思います。

まず、新潟県の巻町という所は、とても田舎町です。
かなり電車の乗り継ぎも大変で、帰りなどは電車を一時間近く待ちました。
そして、人口が少ない。
ホントに何もないんです。
僕なんかはずっと都会に住んでいるので、
都会中心の頭で物事を考えてしまいますが、
面積で言うと日本の大部分はこんな感じなんですよね。
ここら辺の温度差をしっかり頭に入れておこうと思いました。
この辺に何かのヒントがありそうな気がしました。

さて、巻駅から郷土資料館までは、徒歩10~15分ぐらいでしょうか。
今回はカメラと三脚を持っていたのでタクシーを使いました。
そして資料館に到着。
かなりボロボロの小さな建物です。
しかも入場無料。
ここは元消防署だったそうで、
のぞきからくりが保管されているのは元ガレージです。

館長さんとおぼしき人が迎えてくれました。
今日は特別に土田さんに実演をお願いしたのですが、
ついでという事で、地元の小学生にも声を掛けたらしく、
10人ほど来るそうです。
そしてしばらくすると土田さん到着。
今、巻にはのぞきからくりの口上ができるのは7人ぐらいいるそうですが、
故内山キヨさんから直接教えを乞うたのはこの方のみだという事で、
今回は土田さんにお願いしました。
内山キヨさんは、生前若い頃、のぞきからくりを商っていたそうです。

そして小学生も集まり、実演。
今回は俺はカメラをまわしていたので、
残念ながら実演中はのぞき穴からはのぞけのませんでした。
しかし屋台の劣化がすさまじかったです。
写真でもわかる通り、
両脇の羽とでもいうのでしょうか、それが取れてしまっていました。

このからくり、どこかの市や個人が今まで再現しようとしたらしいのですが、
途方も無く金がかかるので皆断念したそうです。
これを本気で作ろうと思ったら家が一件建つそうです。
しかも、このレンズはあのニコンでさえ製作不可能。
中国の山奥にひょっとしたら作れる職人がいるのではないか、
というぐらいの品物です。
そして中ネタの絵。
この立体的な透かし絵を作れる人も、今の日本にはいないそうです。
これはかなりハードルが高いな、と思いました。

実演後、色々とお話を伺いました。
まず口上について。
土田さんが内山さんから教わった当時は、
既に内山さんもご高齢であまり何を言っているのかわからないという事もあり、
主にテープを聴いて学んだそうです。
そして、台本やフシなども完全な定型があるわけではなく、
それぞれが工夫してやるものだそうです。
だから、やる人によっては同じネタでも詞が違うわけです。
このお話はなかなか貴重でした。
ともすれば「内山さん直伝!」なんて看板を使ってしまいそうなところを、
当時の事情を正確にお話しいただけた事に感謝です。

この巻ののぞきからくりは、昭和51年に個人宅で発見されたもので、
それを皆で修復したそうです。
そして内田さんは既に引退されていたのですが、
修復後は色んな所で実演をされたそうです。
しかしご高齢という事もあり、
土田さんが口上を伝承する事になったそうです。
土田さんは当時市か町の非常勤職員だったそうで、
ご実家は昔芝居小屋だったそうで、こういった事に造詣がおありだったようです。

そしてその土田さんが、
三回ぐらい教室を開き、現在では7人ほどが口上ができるそうです。
しかし館長曰く、「土田さんが一番上手い」そうです。

これは覚書としてですが、
大阪の豊中にのぞきからくりが現存するようです。
実演はできるような保存状態ではないようですが。
あとは九州にも。
そして浅草辺りには、のぞきからくりの口上ができる集団があるようです。
これは大道芸全般をやっている集団のようです。
あと、郷土資料館にはかなりキレイな八百屋お七の中ネタもあるようなのですが、
厳重に梱包してあるそうで、見る事はできませんでした。
でもそれって見れなかったら全く意味ないのでは…。

ともあれ今回の探訪が、今後の活動の第一歩となりそうです。

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