万歳からのぞきからくりまで 狂言師が実演する放浪芸

漫才のルーツ

萬歳から漫才へ

萬歳??漫才??

さて、萬歳、万歳、漫才と様々な表記がありますが、違いは何でしょうか。実は厳密な使い分けというものはありません。文字のイメージ的には、古い表記は萬歳で、万歳→万才→漫才といったところでしょうか。

現在日本各地に残っている「マンザイ」は主に「万歳」の字を使っています。実質現在の「マンザイ」で一番古い「マンザイ」はこういったものです。一番古いのに「萬歳」ではなく「万歳」という表記を主に使っているのは、単純に漢字が簡単だからでしょう。
では、「萬歳」はどういう時に使うのか。これは、そういった古典万歳が、漫才に移って行く過程で、つまり明治・大正・昭和にかけて使われたのがメインです。

漫才の誕生

ではどのようにそれが「漫才」という表記に変わったのか。
大正末期から昭和初期にかけて、「」の字を使う事が流行りました。例えばポンチ絵は漫画に、活弁が漫談に、散歩ですら漫歩と呼ばれたぐらいでした。
吉本興業の宣伝部長橋本鉄彦は、自分の会社の専属でありドル箱のエンタツ・アチャコに、何か人の目を引くレッテルを貼りたいと考えていました。
大正の末期からすでに「萬歳」は略字を用いて「万歳」とも「万才」とも表記されていたので、「漫才」の文字を2人にあてがいました。

昭和7年1月の、宣伝部発行の雑誌「ヨシモト」に「今日より万歳は漫才と名乗るべきである」と書いたのです。そしてこれを各新聞社などに配りました。
しかし来るのは抗議の声ばかり。それに対して「今のどこに万歳の面影があるか」「新しい酒を盛るには新しい器がいる」と反論します。
かくして翌11年には新聞・雑誌ほとんどが「漫才」の文字に変わっていました。さらに翌12年には辞書・辞典の類にも収録されるようになるのです。