万歳からのぞきからくりまで 狂言師が実演する放浪芸

音位転換

先日尾張の保存会で、
御殿万歳の才蔵を教えていただきました。
一応自分でも、映像から書き起こしたものを持って行ってたのですが、
台本をいただきました

これで聞き取りにくかった部分もはっきりしました。

そこで今日は難しい話を少し。
この台本には、
「なぎひの葉の二枝も賜れば」
という一節があります。
しかしこれは映像で聞くと、
「なぎの葉の二枝もたわむれば」
と聞こえます。
「たまわれば」と「たわむれば」
これは、
たまわれば

たわまれば

たわむれば
と変化したと考えるのが妥当な気がします。

伊勢万歳の御殿万歳には、
「おっぱりまじたらおんめでたい」
という一節があります。
これは何の事か全然わからなかったのですが、
竹本浩三氏が帝京平成大学笑い学講座の万歳3にて挙げている掛け合いに、
「才蔵: おっぱじまり おっぱりまったら
太夫: おめでたなかばの かいの 」
との記載を見つけました。

という事は、
おっぱじまりおっぱりまったら

おっぱじまりから

おっぱじまりたら

おっぱりまじたら
に変わったと考える事ができます。

なるほど、短くなったり言い易くなった後、
さらに言い易くするために、文字の入れ替えが起こっているのか、
と思っていたところ、日経Associeに面白い記事を見つけました。

「山茶花(サザンカ)」という言葉ですが、
これは元々サンサカであったと言うのです。
文字の入れ替えが起こったものの、
ンとサが入れ替わったため、漢字は仕方なくそのままになったという。

こういった例は他にもあって、
「新しい」は「新た」の文字が入れ替わったものの、
両方の読みが生き残ったパターンだそうです。

なんと海外にもそういった事はあり、
birdは元々bridであり、真ん中の文字が入れ替わったそうです。

こういった文字の入れ替えの事を
「音位転換(metathesis)」
と呼ぶそうです。

もちろんこれだけではありませんが、
この音位転換も、万歳の詞章をより難解にする一助となっている事は確かなようですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です